高速バス

 私は、高速バスが好きである。遠くは学生時代にドリーム号で京都へ往復して以来だが、最近でも、福岡から14時間半かけて、東京まで深夜バスで帰ってくるなどという、学生顔負けのことをやってのけている。

 10数年前は乗っているのはほとんど若い男だったが、最近じゃあ、どんなコースでも半分以上女の子である。日本がいかに安全な国かの見本のようなものである。そう言えば、知人(笑)の21才のおねえちゃんも父親の住む富山へ夜行バスで行っている。数年前伊勢に行くのに名古屋までドリーム号に乗ったとき、最終の新幹線に乗り遅れたおじさんが、私の隣に座り、こんな便利な交通手段があったのかとしきりに感心していた。今では、女の子の次に中年のおっさんが多い。

 連休中、長野の自室で過ごすため、西武・長電の昼間の高速バスを利用したのだが、帰路のバスは今シーズン最後のスキー渋滞に巻き込まれ、普通3時間半のところ5時間半かかってしまった。隣に座ってたおっさんは、携帯で家族と電話しながら、ぶつぶつ言っていたが、そもそも長野6時半発で新幹線なんか腐るほどあるのだから、遅れるのがいやなら、端から新幹線に乗ればよいのである。新幹線の半額近い料金で乗るのだから、時間をとやかく言ってたら始まらない。

 中学卒業以来20年近く、年に2、3冊しか本を読まなかった旅人だが、昨年暮れに国民の歴史を読んで以来、突然読書にはまり、今年に入って井沢元彦だけで「逆説の日本史」(1)〜(5)、「穢れと茶碗」、「天皇になろうとした将軍」、「言霊の国解体白書」「歴史if物語」と9冊、他の本も併せると、11冊も読んでいる。異常なペースである。高速バスは本を読むのにちょうど良い。新幹線は1時間半で東京に着いてしまい、ちょっと寝たらもう着いてしまう。高速バスは、ちょっと寝て、また起きて本を読んでという時間が十分ある。まして夜行バスならなおさらで、私のような住所不定の人間にとって、1泊の宿と1000kmの移動と本を読む時間を提供してもらって福岡東京15000円は格安と言える。但し、どこでも寝られる神経と、ちょっとくらい暗くて、少しくらい揺れていても本を読める視力が必要であるが。

 そうしたことから、私はこれからも高速バスを使い続けるだろう。体力の続く限り。(平成12年4月)

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