タイトルは変えられない(平成21年9月13日)

 この前床屋に行った時に珍しくちょっと待ち時間があったので、本棚のマンガに手を伸ばした。1巻の半分くらい読んだところで、順番が来た。床屋のお兄さんがいう、「『MONSTER』すか、懐かしいですね」
 浦沢直樹がビッグコミックオリジナルで、「20世紀少年」の前に連載していたマンガだ。浦沢作品では、毎週買っていたビッグコミックスピリッツで「YAWARA!」と「Happy!」はリアルタイムで読んでいた。当時オリジナルは読んでなかったので、連載していることは知っていたが、別に浦沢ファンという訳でもなく、連載中はほとんど読んでいなかった。1巻の途中で生殺しになったため、速攻で全巻制覇に走ったのは言うまでもない。
 「20世紀少年」もそうだが、あれだけ展開があちこち飛ぶと単行本で読むならまだしも、月2回発行の雑誌だと何が何だか分からなくなるんじゃないか。作者取材のためとか急病のため休載なんてのもよくあるから、別の展開になっていると、あれっ、1回飛ばしちゃったかなって錯覚することもあるかもしれない。
 それにしても、連載作家ってのは、どうやってプロットを決め、タイトルを決め、連載を進めていくのだろう。「MONSTER」は単行本18巻だが、出版社の都合次第で長期にも短期にもなるはずだから、途中でストーリーが当初構想していたものと違っていくこともあるだろう。浦沢氏の場合、既に「YAWARA!」がスーパーヒットしていて、大作家だったろうから、よっぽど人気投票の結果がひどくない限りは自由に描かせてもらえると思うが、それでも、あれだけいろんな線から最後に一つの結末に導くとなると、担当とのやりとりもさぞかし活発だったのだろうと想像できる。
 連載開始当初から起承転結が全て決まっているわけではない。一つだけ決まっているのは最初から最後まで同じタイトルだということだ。話が変転していった時、途中でタイトル変えたいと思うことはないのだろうか。浦沢作品の場合、「YAWARA!」、「MASTERキートン」、「Happy!」、「MONSTER」、「20世紀少年」と変える必要のないタイトルが並ぶが、意味の不明なタイトルが付いている場合、読み進めていく読者はこれはどういう意味だと考えこんでしまう。あだち充の「タッチ」なんかいい例だ。
 だが、「MONSTER」も実は一人の怪物ではなく、いろいろな意味での怪物が出てきた。タイトルがプロットをふくらませるが、始めに決めたタイトルからは最後まで外れることが出来ない。書き下ろしは出版直前までタイトルを変えられるが、連載はタイトルを変えられない。
 私はこのコラムを書くとき、たいていタイトルを決めてから書くが、書いてるうちに書きたいことの内容が変わっていき、最後にタイトルまで変わっていることがある。連載なんて出来ないな。

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