販売店のバイクは何故こんなに盗まれる(平成15年10月29日)

 35台。私がこの7月末から10月末までに耳にした神奈川県内の新聞販売店で盗まれた配達用バイクの台数である。実際には聞こえない事件もあるし、3ヶ月の話だから、この1年で優に100台を超える台数が盗まれていると見ていいはずだ。ガキのいたずらでなければ大半が今頃東南アジアで活躍していることだろう。新聞販売店のバイクはありかがはっきりしている上に、仕事の性質上確実に人の目の届かない時間帯があり、機種が揃っており、しかも、防犯に対する対策が採りにくいので好き放題に盗まれている。

 都内では組合がアンケートを始めているというし、一都三県あるいは全国に広げればもの凄い台数のバイクが盗まれていると想像出来る。全てが新車でもないし、全てが廃車寸前でもないが、下取りに出せば3万くらいにはなるから、仮に全国で一年に1000台盗まれたとして、被害総額は3000万円だ。しかも下取り価格の話であって、代わりの新車を買えばいきなり2億という数字になる。1000台での話だから、もしかすると全国の販売店の新車購入に費やした金は10億を超えるかもしれない。これは大変な数字である。ところが、新聞やテレビで報道されることはほとんどない。たまに、イチ時に23台盗まれたとか11台盗まれたとかいった場合には新聞に載るが普通は1台から数台単位なのでニュースになることもない。盗まれた店としてはたまったもんじゃない。3台以上盗まれたら大抵の店は配達に支障が出る。何としても早く犯人を捕まえて欲しいものだが、捕まったという話も聞かないし、警察も真剣に取り扱ってくれているとは思えない。

 盗んだ奴も見たこと無ければ、どういう風に運ばれて、どういう風に捌かれるのかも見たことないので想像でしかものを言えないが、おそらく犯人は複数で、新聞販売店の作業時間帯について熟知しており、そして盗んだバイクを売りさばく方法を知っている者達である。終電後紙が来るまでの間でなおかつ折込のトラックをも避けての仕事であるから、もう完全に販売店バイク専門の窃盗集団と考える他ない。ハンドルロックすればスケーターボードに乗せて押し、チェーンをかけてもその数台をまとめてクレーンで吊り上げて持っていくプロ集団だ。売りさばくのはベトナムをはじめとする東南アジアで、全て部品にバラして別々に箱詰めしてしまうだろうから輸出現場を押さえても証拠がない。とすれば、盗んだ現場からずっと尾行して船積みするところまで押さえなければ一味の全貌は分からない。一体誰がやるのか。警察に動いてもらうにしても一件一件が小さすぎて動いてくれないとすれば、やはりおおごとにしていくしかないのではないか。先程言ったように、全国では数千万から億という被害総額になる。

 犯罪に対しては何と言っても抑止力が大事である。その第一は監視の目である。広く世間にこの犯罪の存在を認知してもらうことから始めなければならない。各社の販売局は編集に働き掛けて記事にしてもらわなければならない。日販協や新聞協会はどういう場合に盗まれているか、台数や曜日日付時間帯など、現状分析をして警察庁や加盟各社に呼びかけて世論喚起に努めるべきである。そうして、一般の人でも車で通りがかった際に新聞販売店の前で深夜にバイクを触っている人間が居たら怪しんでもらうことが必要である。一般に新聞販売店は深夜作業だから、店の前で人がバイクをいじっていてもあまり怪しまない。おそらくおまわりさんでもそうだろう。とにかく、バイクを組織的に少しずつ大量に盗んでいる集団がいるということを事件として認知してもらわなければ始まらない。

 次に防衛である。最終的には発信器や防犯カメラでもつけるしかないのだろうが、やはり最低限ハンドルロック、チェーン、自動感知式ライトなどは必要だろう。現地店主会なりグループ店でのパトロールなりも必要かもしれない。犯人グループが逮捕されて、犯人にリスクを感じさせない限り、販売店のバイクは盗み続けられるだろう。何とかしなければならない。

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