恐怖政治と朝令暮改が指示待ち族を作る(平成15年4月3日)

 最近の若い社会人は指示待ち族が多いと言われて久しい。教育のせいなのか、テレビのせいなのか、あるいはマンガのせいなのか、思考能力の乏しい若者が次々と社会に送り込まれているようである。しかし、もともと思考能力を備えていても、ちゃんとした大人であっても、指示待ち族を作ることは簡単である。人は自分の意見が絶対に通らないと悟ったとき、あるいは自分の全人格が否定されたと認識したとき、指示待ち族に転落するのだ。放任主義がいいとは思わないが、過度の干渉も自分でモノを考えない習慣を作る。

 従業員でも担当員でも近頃じゃ若いもんが多数を占めるようになってきた。我々が若い頃は(ってお前はそんなに年寄りかって言われると困るが)仕事は教わるモノではなく、先輩の仕事を見て自分で覚えるものだった。というか、その徒弟担当員社会の最後の世代かもしれない。最近は箸の上げ下ろしまで教えなければ自分で勉強しない若い奴が多いと嘆いていたら、最近はそうでないと無理ですよと隣の後輩が言う。自分で判断する習慣のない社員ばかりになってしまえばその組織は崩壊するだろう。

 目標達成が至上命題なのは営業セクションの宿命だが、そのための手法として恐怖政治を敷けば、いつか自分で判断出来ない社員ばかりになってしまうに違いない。自分がさぼりたいから言い訳する人間ばかりではなく、自分の信念に基づいて異議を唱える者もいる。そうした声を圧殺し、為政者が自分の手法を押しつけていけば、最初は多少の抵抗を示していた者も、あきらめとともに言われた通りに仕事するようになる。その方が楽だからだ。社内に張り巡らされたスパイ網、、、緊急に行われる夜8時からの会議、、、早朝訪店させ、その店に電話を入れいちいち確認する、、、都合の悪いことには触れず、自分の方針に都合のいい事実だけを断片的につなぎ合わせて部下を叱責する、、、この非常時に何でこんなに休むんだと言いながら、労働組合には休めと言っているのに休まないんだという、、、現場の担当頭越しに後任店主を決定し、現場の担当がそれを知るのは引き継ぐ店主より後、、、等々の上司の振る舞いが次第に部下のやる気を削ぎ、最終的には指示待ち族を作って行く。

 朝令暮改もまた指示待ち族を作る。上司から出された方針がコロコロ変わっていると、せっかくやっていたことが台無しになる。そうすると部下は様子を伺いながら仕事をするようになる。現場で店主に話をするのは結局は担当員だから先月言ったことが今月ひっくり返ったら、自分が嘘を言ったことになるのではっきり完全に決まるまでは何も話せない。不良拡張団は整理すると言っていたのに、いざ紙が増えないとなれば、突然ライバル系統から億単位の引き抜きを行う。実配主義で行くといって残紙の整理を続けながら、前年比予算比で減が続けば結局は目標数達成を要請する。ご時世だから海外研修は禁止と言いながら、ある特定の団体には目をつぶる。

 まあ、やる気をなくしていると思いこんでいるのは私だけで、みんなそれが正しいことだと信じて一生懸命やっているんだと思いたいが、自分のしっかりした信念と仕事に対する誇りを持ってやっていないと気がつかない内に指示待ち族に転落しているかもしれない。おっと、もう指示待ち族になっちゃったかも。(※ここに出て来る例は別に特定の系統を指している訳ではありません)

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