諸悪の根元は補助金か(平成15年1月26日)

 10年くらい前、当時の社長にレポートを提出したことがある。秘書室経由だから、実際に社長が読んだかどうかは分からないが、要旨は次のようなことだったと記憶している。「社と店は共同体であり、オールトータル(社と店)での産経新聞の収入は発行部数にかかわらず、読者の支払う購読料と本社広告と店の折込で成り立っており、そのオールトータルの取り分の配分方法が、原価と補助金システムである。この3大収入の前には事業収入など小さいものだ。社は製作・運営経費、店は販売・運営経費とお互いに経費がかかるのでこの経費を計算してお互いが食っていけるようにならなければこの共同体は崩壊する」

 原価とマージンとは言っているが、合わせればイコール新聞代定価のことだ。この誰でも分かる1+1=2の計算を複雑にしているのが補助金システムである。製造業ではどこの業界でも販売奨励金のようなものは存在しており、より多くの商品を売る人にはマージンの他にバックリベートが支払われる。こうしなければ、誰も余計に売ろうとはしないからだ。しかし、このより多く売る人と言うのは裏を返せばより多く仕入れる人のことである。いつの間にか、より多く売るではなく、より多く仕入れるが基本原則になってきてしまったのが新聞販売業界の現状だと言える。社にとっては発行部数の維持増大のため、店にとっては折込と補助の獲得のためと、どちらにとってもメリットがあるからであって、それがさらには、多く仕入れれば、その分の仕入れ原価は安くなりますよ、その金で折込を獲得し、その資金で読者を増やしてくださいという指導になっていった。さらには自社系統の折込代理店を作り、さらに折込を獲得しやすくすることによってより一層の部数拡大競争に拍車がかかるという構図になっていったのが、新聞販売業界の歴史だ。ところが読者がいないのに紙を取って折込を獲得するのは折込詐欺だと今回の大和事件での地位保全訴訟で、こともあろうに本社側から提起され、裁判所もそれを認定してしまった。実際詐欺なんだから裁判所は当然認定する訳だが、本社があそこまで公然と積み紙は折込詐欺と断罪してしまったからには今後残紙が発見されれば改廃するかどうかはともかく、即座に紙を切らざるを得ない。今まで黙視していたライバル系統だってこれからは黙っていないのではないか。自分の残紙と相手の残紙と天秤にかけて、相手の方が血が流れるとなれば、当然刺しにいくだろう。代理店ではなく、直接スポンサーに写真でも送って。現にある県で残紙を理由に販売店と系統折込会社に右翼が脅しをかけた例も最近あったらしい。

 補助金が出て上紙原価が安くなる一方で、折込という莫大な別収入のシステムがあり、新聞には予備紙が必要ということになれば、それはどんどん拡大解釈され、本社に隠して紙を積む人も当然出てくる。それを断罪するならシステムの見直しまで図らなければ直らないのではないか。諸悪の根元は莫大な折込と上紙原価=補助金なのではないか。昔、ある店主が言っていた。補助なんて人聞きが悪い、マージンが欲しいと。マージンでも補助でもいいが、要は実売読者数に対してのマージン(補助)制度でなければ、今後も折込詐欺は続いていくだろう。新聞販売店というシステムが何故考え出されたか、これは系統会というシステムにも言えるが、要はいかに本社のリスクを回避し、いかに効率的に部数を増やしていくかだったはず。折込詐欺を奨励しているのでなければ、発見次第切るなり改廃するなりして欲しいものだ。そうでないなら感情改廃と呼ばれても致し方ないだろう。

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