小さな成功、大きな成功(平成14年4月8日)

 産経新朝刊がスタートしたと思ったら、もう1週間経ってしまった。普段の月なら2、3日頃上京する私も、不測の事態に助太刀出来るよう、今度ばかりは1日早朝に社に上がった。前夜遅くまで、社員拡張カード等の販売店連絡に追われた余韻の残る販売局の静寂は、フリーダイヤルが電話代行会社から、本社に切り替えられてすぐに破られた。とにかく電話が鳴りっぱなし、不着不着不着である。今日から入るはずなのに入ってないという電話の大半は、洩れなく連絡したはずの社員カードとTVCM申込だった。しかし、フジテレビ「とくダネ!」で産経の夕刊廃止が取り上げられて以降、次第に申込が不着を数の上で圧倒し始めた。まあ、小さな所帯の少ない電話台数で受けているのだから、鳴りっぱなしも仕方がないが、ずっと話し中だったというお叱りを結構受けたものだ。その後、数日間はこの状態が続き、私のように東京に帰ると陸に上がった河童状態の人間は、ひたすら電話番をしていた。

 さて、心配された不測の事態はなかったが、仙台にいたら分からない様々な事態が密かに進行していた。某社の担当さんは産経を取り扱っている自系統店に対して、産経の紹介カードが何件来ていて、その系統紙から産経に変わったのは何件か報告させている。あるいは産経には規定のチラシ以外は一切入れない、自系統紙読者に対する紹介にはチラシが入らないと説明し、購読延長をお願いするとか、産経読者を自系統紙に切り替える最後のチャンス!と檄を飛ばしている。産経を取り扱っていない店には、産経に落とされたら、チラシが入らない事などを説明してクーリングオフさせ、自系統紙を継続させるなどと指示している。まあ、この程度なら当然あり得る話だが、これらに加えて、産経新聞を1部たりともプラス注文してはならないという指令が飛んでいる地区もある。紙が足りなければ配れないから、社員拡張はもとより、読者が自分の意志で申し込んで来ても配達しないということだ。これを競争制限、優越的地位の乱用とは呼ばないとすれば、この世に公正取引委員会など必要ない。

 それはさておき、この新朝刊作戦開始当初から、我が専務は「この作戦に失敗はない、どれほど大きな成功を収められるかだ」と事ある毎に、販売局員や販売店主を激励している。全くもってその通りだと思うのだが、じゃあ、大きな成功とは何か。それは、東京100万部の達成であり、あるいは東京100万部が視野に入る部数まで、出来るだけ早く持っていくことだ。それは現在の82万部をあと18万部増やすことだ。なんと22%増、比率から見れば我々にとっては絶望的に大きな数字である。しかし、大阪本社で120万部あることを考えれば、東京産経の部数は、150〜200万部くらいあったっておかしくないとも言えるのだ。逆に言えば、現在の82万部という数字は不当に少ないと言えるし、実は東京100万部なんて小さな成功なんじゃないのか。

 産経が18万部増やし、もし、三大紙を均等に食ったとしても1紙あたり6万部。微々たるとは言わないが、産経が22%という比率の増紙を目指しているのに比べれば、極めて少ない数字である。もし、読売1紙を食っても彼の紙は1000万部を割らない。朝日1紙を食ったとしても彼の紙は700万部を割らない。この大新聞の屋台骨が揺らぐとは思えない、その程度の数字なのだ。それより産経が夕刊を廃止し、セット地区の読者に統合版価格を周知してしまったため、これから急加速する夕刊離れはもう誰にも止められない。夕刊減による損害は産経に食われる部数の比ではないだろう。それを恐れて、しゃにむに産経潰しに走っても、産経を支持する熱烈な読者がいる限り、そう簡単にはいかない。その前に夕刊離れ対策が前面に立ちはだかるだろう。常に同じ土俵で勝負するよう仕向け、大新聞スタンダードを押しつけ、産経の部数を何十年も東京80万、大阪120万に押さえ込んできたつけが今、まわってきたと言える。産経のよさを読者が知るのはまだまだこれからである。

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