新聞戦争は仁義なき戦い(平成14年3月10日)

 どうも、社内を見ていると、産経新聞を隣の会社が潰したがっていて、あの手この手で圧力をかけてきているのにのほほんとしているように見える。そう見えるのは私だけなのかもしれないが、聞くところによると、隣の販売局長さんは今でも、「産経新聞は潰さなければいけない」と言っていると聞いた人がいる。読売のお店の中には、*産経を増やすとクビになると言って、隣の産経を扱っている店から産経新聞を買って、増えた新しいお客に配っているお店もあるらしい。また、ある地区では、昨年末に産経の切替と配達拒否を本社から指令されて、そんなモラルに反することは出来ないと逆らったために、産経を持っていようがいまいが、本社から強力な経営調査が入って、産経あるなしに関わらず、廃業に追い込まれているところがあるらしい。良心的なお店や良心的な担当さんも多いのだが、恐怖政治の下、産経潰しに狂奔せざるを得ないのだろうか。

 さて、明日3月11日はまたしても休刊日なのだが、東京紙で休刊するのは産経だけ。東京新聞が特別版である以外は、いずれも当初予定していた休刊日を廃止し、通常発行するとのことだ。噂によると、読売新聞は、産経が休刊日即売を止めるまで、休刊日を廃止し通常発行によるプレッシャーをかけ続けようとしているようだ。明日の朝、どこの地区かは分からないが、次のような文面のチラシ入りで、産経読者に読売を投函するつもりらしい。

ご愛読者の皆様へ

きょう11日は「産経新聞」の休刊日となる為、

「読売新聞」をお届けさせて頂きました。

 日頃はご愛読賜り心から感謝申し上げます。

 さて本日11日は3月の休刊日にあたり。産経新聞の配達を休ませていただきます。

 しかしながら、読売新聞では、政治・経済情勢が緊迫の度 を深めている折、読者にご迷惑をおかけしないよう、通常通 り新聞を発行することに致しました。

 「朝、新聞が読めない」 などのご不便をおかけしないよ う、日頃の新聞にかわり読売新聞をお届けいたしました。  どうぞお読みください。

YC読売センター
所長・スタッフ一同

 とまあ、こんなわけだが、昨日は、福島の販売店から、産経の読者に福島民報を入れようと思っていると言う電話があったので、勘弁してくださいと断ったりしていて、まあ、親切心でそう言ってくれる店もある。しかし、このチラシは、産経を持っている読売新聞の店だけでなく、そうでない店も産経の読者に新聞を入れようと言うわけだ。まあ、そのぐらいのことは当然やるだろうし、当然やる会社で、それが怖いということで、朝日を始めとする他の新聞社は、休刊日を廃止せざるを得ないのだ。でもって、産経のお店だってみんなそういう危機感を持っているから、うちも、特別版を宅配用に送って欲しいと言ってくるのだが、それをやってしまえば、休刊日がなくなったのは、やっぱり産経のせいだということにされてしまうので、社も意地になって原則を貫いている。逆に言えば、よその社が無原則だからこんな混乱が起きていると言える。

 以前に、産経が経営難の時に専売を潰して、他系統に預けていった話をちらっと書いたが、だいたい預ける時は、「いやあ、専売じゃ産経さんも経費がかかって大変でしょう。うちで預かれば、*納金は安心だし、紙も減らしませんよ」なんてニコニコしながら言っちゃってくれたり、既にある系統に預けてあっても、「うちなら、紙も増えますから、是非うちに持ってきてくださいよ」なんて言う例が多いのだが、いざとなればこのありさまだ。まあ、それが甘言であることは分かっているのだが、結局専売の時に所長の顔で取ってもらっていた読者や目一杯サービスしてた読者は、みんな落ちてしまうから、紙が預けて増える例は極めて希である。(そんなことない、俺は預かって専売の時より増やしたぞって所長さんごめんなさい。でもごく少数だと思います)

 それが、ましてや持っている地方紙を投げさせたなんて経歴の持ち主が販売最高幹部に収まるや、本社の命令一つで、産経は全部切り替えろ、取引返上だ、配達を投げろとなってしまう。まあ、自分がその立場にいたらやらないかと言えば、きっとやるだろう。これが弱肉強食の新聞販売業界なのだから。そんなことも知らずに、読売とニコニコ提携してしまう我が社も我が社なのだ。早い内に気付いてよかったのかもしれないけど、今回の騒動が収まって10年もして、何もなかったかのように、また、「朝日一系統だけに預けたらだめだ、読売に分散しろ」なんて言ってるかもしれない。そうなりゃ、本当にうちの社は馬鹿丸出しだな、と思う。そんなことがありませんように。

  *産経を増やす・・・一般紙及びスポーツ紙は新聞公正取引協議会の各県支部に部数報告しており、各社の担当員は対抗紙の部数が一目瞭然に分かるようになっている。

*納金・・・新聞販売業界では販売店から本社への原価支払の事をこう呼ぶ。今や納金なんて言葉を使うのは新聞とヤクザ屋さんくらいか。

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