旅人新聞裏話 緊急特集!! 三大新聞のエゲツないやり口(平成13年12月29日)

 産経新聞社は平成14年4月から東京本社管内で夕刊を廃止し、朝刊単独紙として生まれ変わることを平成13年11月7日に発表した。これに伴い、定価は現在の*朝夕刊セット3,850円が東北など朝だけの*統合版地区と同じ2,950円になる。このニュースはフジテレビ系列のみならず、NHKも他の民放系列も全国ニュースで報じたので、新聞関係者でなくてもご存じの方が多いと思う。産経としては社運を賭けた、乾坤一擲の大勝負なのだが、夕刊廃止、実質定価値下げということに危機感を抱いた三大紙から、現在強烈な妨害活動にさらされている。

 各紙とも朝夕刊セットが建前で売ってきた歴史的経緯から、夕刊離れを食い止めるため、朝刊だけを購読する場合は、3,925円のセット定価から、1〜400円値引きした程度の値段で各販売店が売値を決めて売っている。ここに産経が朝刊定価2,950円で殴り込みをかけるのだから、心中穏やかでないのは当然だ。しかし、彼らも統合版地区では定価3,007円で売っているのである。現実問題として*夕刊離れに歯止めをかけるためとは言え、実際に朝刊定価を過剰集金しているのも事実なのだ。産経の*専売店でもセット売りの現在は、統合版価格より150〜400円程度高めの設定で売っているところが多い。この、デフレの時代、さらに読者の夕刊離れも相まって、放置すれば、相当な読者が産経に流れると危惧していることは容易に想像出来る。

 そこで、各社は産経と取り引きしている自社系統の販売店に対し、様々な形で抵抗を試みさせようとしていると思える事態が、現在首都圏各地で多数発生している。産経新聞社は悲しいかな過去の経営難の折に、専売店を潰して各社の系統店に預けてきた経緯があり、全体では相当な面積の配達をこうした*複合店に頼らざるを得ないのが現状だ。そこが産経の最大の弱点であり、発行部数が他紙より少ない要因でもある。専売店がもう少し多ければこんな事態も発生しないのだが、会社や新聞の存続のためには仕方なかったと言える。預ける店が同一系統に偏るとその社の言いなりにならざるを得ないため、分散してはいるが、今回は三社連合とも思える締め付けである。
 最初は、取引上在庫となっている*予備紙のカットを要求してきた。それこそたとえ1部でもである。これには産経社もある程度応じざるを得なかった。
 次に、現在の産経読者に対し自系統紙への切り替え工作を展開しており、12月中旬以降、毎日毎日多数の読者から苦情電話が本社に入っていることで分かった。これで紙が余ればまた注文部数を減らし、最終的には複合店での産経の取り扱い部数を極限まで減らしてしまおうという作戦に思える。そのためには、様々な方法が採られている。下に紹介したある読者からの手紙はそうした、激烈な工作の一端を物語るものである。原文に忠実に打ち出してみたので一読してもらえれば幸いだ。なお、我々産経販売局員は*不測の事態に備え、1月1日朝5時に本社に集合することになっている。
<読者から本社に届いたお手紙>

各社のサンケイイジメ、ここまで来たか。
―サンケイボイコットの販売店に怒り

"ウェーブ産経"の発足、心よりお祝い申し上げます。

私儀
 サンケイ新聞とのお付き合いは四半世紀前にさかのぼります。
 当時、県警広報課に在籍していました折、記者クラブ加盟各社の記者諸氏のサンケイ記者イジメには
目に余るものがありました。
 その当時、中国ではサンケイ特派員の入国拒絶、内にあっては、日共言論裁判、「自由を賭けた闘い」
など、国の内外でサンケイは多難な時代、他の各社からは異質な存在であったのでありましょう。
 サンケイ記者イジメもそのようなことに影響されていたのかも知れません。
 以来、購読紙はサンケイ一筋を貫き通してきました。
 然し乍ら、ここに至ってサンケイイジメが購読者にまで火の粉が降りかかってきました。
 団地の各新聞販売所でサンケイボイコットの挙に出たのです。
 四月から実施されるサンケイ値下げに対抗して、本社からの指示と思われます。
 以下、その経緯について申しあげます。

 「一月からサンケイには折込み(広告)は入れないことになったんですが、それでもサンケイを入れますか。
他の新聞にかえていただけませんか」
 十一月末、集金に訪れた毎日販売所の集金担当の婦人の言に唖然。
 折込み広告は、地域社会の情報源、特に家内など、毎日の広告が楽しみだけでなく、日々の経済生活に
欠かすことのできないものですので、これが入らないでは家計に大打撃。
 「サンケイ値下げに対抗してなの、エゲツないね。そんな店との付き合いはやめにしましょう。」
 と、思わず集金人をどなりつけたが、集金女性には罪がない、反省、
 更めて、販売店に赴いて購読中止を宣告、

 「お父さん新聞どうするんです。新聞が入らないと、株価もテレビも、広告もない暮しなんて、ほかの新聞
でも変らないのじゃないの」
 「?ってなの。十二月まではサンケイ契約してあるんだから。」(※?は文字判読不能)
 「私、読売の店に行ってサンケイ頼んできますよ」
 と外出した家内
 「読売では一月からサンケイの看板降ろすんだって」に唖然
隣りのアサではサンケイを扱っていない。
 これで、この団地ではサンケイを読むことはのぞみなし、
 なんとひれつなこと、家内のさみしそうな顔。
 四半世紀のガンコ、折らなければならないのか、ふんまんやる方なし。

   十二月二十二日、所用あって外出。夕刻帰宅すると縁側に一見して"新聞のサービス品"とおぼしき洗剤
の大箱と発泡酒一箱、その箱には「毎日新聞社」とコピーされている。
 「なんだこれ」
 「お父さん、一年毎日でがまんして下さいよ」
 一年間、契約した由。
 拡張員の言、
 「お宅さんでは長い間サンケイお願いしていました、御迷惑おかけしますが今回サンケイ扱わなくなりまし
たので、毎日お願いしたいんです。できるだけサービスします」その条件として
一、購読料金は一ヶ月二千九百円、※1br> 一、一ヶ月無料※2
一、洗剤(ビーズ大箱一(600グラム入16コ))※3
一、発泡酒一箱(350ml24)※4(以上※印は旅人注:下記参照)
 これだけの条件では、うちの女房ならずともOKすることでしょう。
 女房どの拡張員の腹のうちを読んで
 「もっとサービスできないの」にさらにビーズの小箱六個※5を積みあげた。

 当分の間、新聞なしか、五キロはなれたJR駅まで求めに行こうかと腹をくくっていたが、留守のうちに女房
どのの戦果に脱帽、救われた感もあり。

 それにしましても、各販売所、いや各新聞社のイジメの体質は四半世紀前のと全く変っていない。
 長年親しんだ紙面と別れることの」さみしさ、全く目にしたことのない毎日の紙面に不安はありますが、サン
ケイと共に購読している月刊誌「正論」に救われます。
 「正論」誌と毎日を対比して読むことも勉強になると思います。
 サンケイ専売所ができることを祈念すると共に、ウェーブ産経の益々の御発展を祈念して筆をとめます。

平成十三年十二月二十七日
○○ ○○

二伸

 本夕刻、十二月分の集金に訪れた女性にいや味の一言。
 「あなたに罪はないが、販売店もエゲツないね、読者の読む自由を封圧するなんて、言論人のすることでないよ」
 「私たちにはなんにもわからないんです。四月ごろにならないと、本社の方針もはっきりしないんだそうですよ」
 「まあいいやさ、毎日や読売で方針が固まるまで、がまんするよ。だが、こんなことは決してプラスにはならない
でしょうよ。」
 長年つき合ってきた集金婦人には罪はないことですが、つい口から出てしまいました。

 この手紙は千葉県のある毎日新聞の専売店の読者(78)からの手紙だが、年末に向かって、朝日毎日読売の全部ではないが、かなりの数の店で同様の読者切り崩しが行われている。商慣習、商道徳上からも取引契約上からも許されざる行為であり、今は我々も臥薪嘗胆しているが、実際に配達放棄などの読者に直接迷惑をかける行為が行われた場合は当然な措置をとるつもりである。

*統合版・・・新聞は1日1回発行するか2回発行するかで、24時間編集と12時間編集に別れる。統合版は1日1回発行で、基本的には朝刊で発行される。夕刊に載った記事が朝刊に載らないという事態が避けられる。

*朝夕刊セット・・・1日2回発行される新聞を朝刊と夕刊に分け、12時間毎の編集で、その時点での最新のニュースを届けようと考え出された仕組み。セット版の朝刊しか読まないと、夕刊に載ったニュースを見逃すという事態が発生する。

*夕刊離れ・・・生活サイクルの変化に伴い、深夜に帰宅する独身者や共働き家庭では、家に帰っても夕刊を読む時間がなく、朝だけ新聞を読めればいいとして、夕刊はいらないという読者が増えている。この10年で東日本だけで各紙併せて100万部減った。

*専売店・・・新聞販売店の取引形態の一つ。ある系統の新聞を専属で扱う販売店のこと。1紙しか扱わない場合は単専、自系統紙以外の紙も扱う場合は複合専売店、あるいは単に複合店という。全紙扱う場合は合売店あるいは完全合売店という。

*予備紙・・・実際に配達される、あるいは即売スタンドに出すための新聞の他に事故や急な読者からの注文等に備え、各販売店が店内に取り置く紙のこと。残紙ともいう。2年前までは、新聞公正競争規約で、実売注文部数の2%と定められていたが、現在は撤廃されている。販売店が折込対策等で自ら過剰に予備紙を持つことを積み紙と言い、発行本社が強制的に積ませると押し紙というが、本社と販売店の合意のもとにそれぞれの販売店が独自の予備紙を取っていることが多い。

*複合店・・・専売店参照。また、自系統の紙を他系統販売店に預けている場合その店のことを複合店と呼ぶ。自社系の店が専売店。

*不測の事態・・・現在行われている読者の切り替え工作の中には、正月から産経を配達しないと読者に宣言しているものが多数あり、多くは読者に切り替えを迫る口実と思えるが、中には本当に配達を投げてしまう店も出るかもしれないという事態。その対応のため、販売局員は全員元旦早朝出勤となった。何も起こらなければいいが、、、

※1・・・今回の妨害行動に当たり、各社は産経浦安店等がモニターと称して大幅な値引き価格で新聞を売ろうとしたことを非難し、また切り替えの口実としているので、これは自家撞着。

※2・・・上に同じだが、新聞協会と公取委の間で再販問題をめぐり、同一紙の提供は景品(新聞側見解)か値引き(公取委側見解)かとの議論に決着が着いておらず、三社側は景品だから違反との立場である。

※3・・・現在の新聞公正競争規約では新聞定価6ヶ月分の8%までの景品しか認められていないのでこれも違反。

※4・・・当然違反

※5・・・これだけだったとしても違反

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