横浜問題の解決にあたって(平成13年12月1日)

 横浜ベイスターズの筆頭株主問題が、白紙撤回という形で解決した。ナベツネがこの問題でギャーギャー騒ぎ初めて以来、最終的にはこれしか方法がないと思っていたが、まさしくその通りになった。これでめでたしめでたしとなればよいのだが、事はそう簡単ではない。

 そもそも横浜の親会社問題は、大洋ホエールズ以来のオーナー、マルハの経営不振問題から発している。横浜球団はここ数年来、横浜に根を張る市民球団として生まれ変わろうと、球団名から、親会社の名前をはずす、あるいは独立採算制など様々な運営方法を試みてきた。一方横浜を支える親会社のマルハは商業捕鯨禁止、経済水域200海里時代突入以来、経営不振が続いている。

 23年前、親会社として球団維持が難しくなった大洋漁業は第3者割当増資により、国土計画に45%の株を保有してもらった。その2年ほど前、国土の堤義明社長は飛鳥田横浜市長(当時)に頼まれて横浜平和球場の再建建設に携わっていた。ビジネスは知っているが野球を知らない堤氏は大リーグの球場の例を日本に初めて採り入れ、年間シートを売りさばくことによって横浜市が1円も建設費を出すことなく球場を作るノウハウを与えた。この縁と中部藤次郎オーナーとの友人関係で堤氏は大洋の株を持つことになったのだった。

 大洋が横浜スタジアムに移った年の秋、太平洋クラブ、クラウンライターと看板を変えながらライオンズを運営してきた野球好きの財界人、中村長芳氏がにっちもさっちもいかなくなって、堤氏のもとに駆け込み、球団売却を持ちかけた。堤氏は商売にならなければ意味がないので、西鉄以来の九州の球団、ライオンズを西武線沿線の所沢へ移転するのを条件に引き受けることにした。そして、球団購入と選手強化資金を大洋株を売却することで調達することにしたのである。その話をどこから聞いたか最初に飛んできたのが鹿内春雄ニッポン放送副社長(当時、後のFCG議長、88年死去)だった。鹿内氏は国土の持つ45%を20億で買うと持ちかけた。堤が買った値の3倍だったらしい。これなら、ライオンズを買って、選手強化して、中村氏に退職金も出せると堤氏は考えた。しかし、大洋本社はその株譲渡に待ったをかけた。45%全部を一放送媒体に売らないで欲しい、TBSと2:1で売って欲しいと。20億の2/3は約13億だが、鹿内氏はそれなら8億しか出せないと言った。ニッポン放送としては大洋の持つ巨人戦の放映権独占が目的で独占出来ないならそんなに出せないということだった。そして、その条件通りに株の売買が行われ、現在のマルハ55%、LF30%、TBS15%という持ち株比率が出来上がったのだ。

 この時点で既にフジテレビはヤクルトスワローズの株を6.7%所有していた。昭和45年にサンケイ新聞がヤクルトに球団譲渡した際、サンケイは1/15の株を残し、その後フジテレビにこの株を譲渡していたのだ。今回複数球団株の保有という野球協約に抵触するというならば、既にニッポン放送が大洋の株を持った時点で問題にすべきだったのだ。今年の2月フジテレビの持つヤクルト株の比率は20%に増えた。あるいはこのとき問題にすべきだったかもしれない。

 今回の一連のナベツネの発言を見ているとその狙いはフジのヤクルト株放出にあったようだ。今、ヤクルトは巨人のライバルとして完全に立ち塞がっている。先代松園尚巳オーナーの時は、オーナー自らが巨人ファンと称していたチームがである。そのヤクルトでFCGが大きな発言力を持っていることをなんとしても阻害したい。巨人中心の球界を維持したいということではないのか。横浜はチームとしては強くなってきたが、球団経営としては脆弱である。横浜は放っておいても潰れるから、ニッポン放送のオーナーは認める代わりに、フジをヤクルトから追放しようとしたのではないか。八百長など起きないことは、一心同体のコクドと西武鉄道の2チームがあるアイスホッケーが証明している。ましてや、LFとCXは同じグループとはいえ、全くの別会社だ。今回、ニッポン放送が横浜の筆頭株主になるにあたって、FCGの羽佐間代表と横浜の中部オーナーはナベツネに挨拶し了承を得ている。ナベツネの尻を掻いたのはどうやら堤氏らしい。彼らの本音は、協約改正と球界再編成なのではないか。西武としては、伸び悩む観客動員を打開するには巨人と同じリーグに入りたい。横浜・ヤクルト問題を契機に1リーグ制や新リーグへと動けば儲けものと堤氏が考えたとしても不思議はない。踊りを踊ってくれる大声の役者を使えば可能かもしれない。球界の盟主として権力をふるい続けたい読売と商売の思惑が絡んだ西武が一致して今回の一件を潰したとしか思えない。そのためなら、横浜なんか潰れてもいいのだろう。いや、むしろ、市民球団を標榜する横浜は邪魔なのだろう。

 可哀想なのはマルハだ。ハードルを更に高くされ、自分たちの理想を引き継いでくれる買い手を捜さなければならない。

 ちなみに、巨人は球団ではない。株式会社よみうりという会社のいち事業部だ。「よみうり」とは読売新聞中部本社・西部本社を包含する組織である。つまり巨人は新聞社そのものなのだ。

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