新聞定価は安くない?(平成13年8月18日)

 最近、産経の熱心な読者の方々と話す機会が多く、産経好きの人は裏を返せば大新聞嫌いの人が多いため、次のようなことをよく耳にする。曰く、「新聞の宅配制度が選択の自由を奪っている」、「宅配をやめて、みんなスタンド売りにすれば、今のような、大新聞の奢りはなくなる」、「景品やセールス料など販売経費を使わなければ、(オール即売が)実現出来るはずだ」等々である。ある意味では当たっているし、私も賛同出来るところが多いのだが、実は困った問題がある。

 それは定価の設定である。新聞は返品を前提としない、販売店買い切りのシステムによって定価を決め、予算を立て、企業として存立している。発行本社や販売店が使う、景品やセールスマージンは確かにそれなりに莫大な金額ではあるが、インスタントラーメン業界の巨額のTVCM経費に比べれば総額、対小売価格比率ともはるかに少ない。新聞の場合は広告が取れるというメリットもあるが、不況の今、広告の比重は落ちているし、発行部数が安定しなければ、現在同様の広告料金は頂けない。

 新聞において最も比重が高いのは、紙代、インク代などの原材料費を除けば、人件費である。朝日、日経、読売の社員の給料がべらぼうにいいのはともかく、産経や毎日の社員の給料は、普通の電機メーカー等とさほど変わらない。しかも、我が社にしてみれば、過去2回の産経残酷物語と言われる大リストラの後、今でも少数精鋭主義でやっている。それでも人件費は膨大になってしまう。

 これが、安定部数を望めない即売中心の販売になれば、今の定価はとても維持出来ない。この春、公取委が、新聞を含む著作物6品目の再販存置を決定したが、再販の裏付けのある宅配制度のもとでこそ、今の定価が維持出来るということを是非理解して欲しい。そして、今の1部売り定価は、あくまで月極定価から逆算して決めたものであることも理解して欲しい。オール即売となれば、TVCMとは言わないが、返品を前提とした価格算出をしなければならず、今の1部100円強では無理である。産経は9月1日から、1部売り定価を現行の110円から100円に値下げするが、それだってあくまで宅配へのハネ返りを見込んでの戦略的価格である。

 今、産経を読んでいない皆さんは、是非当社の意のあるところを汲んで、ワンコインで買いやすい産経を駅売店等で買って、他紙と読み比べて欲しい。

 今回は初回ということで、業界と自社の自己宣伝になったが、今後本格的な裏話になるかも。。。。。

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