劇場型台風(平成16年10月23日)

 台風23号は超大型の名にふさわしい傍若無人ぶりで10月20日昼から21日朝にかけて、四国・近畿・中部・関東地方を串刺しにした。当初の予想進路のほぼ真ん中を進み、高知、大阪、奈良、滋賀、岐阜、長野、山梨、東京、千葉を抜けて太平洋へと抜けて行った。前回22号が予想進路の東側を進んだのに対し、今回は東側を進んでくれれば、「台風上陸のおそれ」で済んだのに、ずばりど真ん中、串刺しコースまっしぐらとなってしまった。上陸前の勢力が暴風域半径800kmという日本列島まるごと暴風域に呑み込む大きさの台風だ。

 今回の台風はNHKで一日中台風中継をやっていて、まさしくゴールデンタイムに日本のど真ん中を台風の目が突き抜ける様が全国民注視のテレビの中で展開していた。だまってテレビを見ていればいいのだが、今回も台風を甘く見てえらい目にあったり、果ては最悪の事態を迎えた人達もいる。思うに、日本人はもはや、台風も地震も噴火も事故も殺人事件も戦争までも、スクリーンやブラウン管の中のこととしてしか見られなくなっているんじゃないか。自身に降りかかる危険として実感出来なくなっているんじゃないだろうか。

 人は痛い目に遭うと次は警戒する。例えば、やけどという感覚は実際に熱いモノに触れて熱い思いをして初めて、熱いモノに触れればやけどするという感覚を得られる。しかし、テレビで見たやけどは、実際に熱さを感じないから、やけどの恐ろしさを実感出来ない。寒さは暖房の効いた部屋にぬくぬくとしていたら実感出来ないし、寒さに強くなるためには、少しずつ寒さに慣れなければ寒さに打ち克てない。戦争体験を風化させるなというのはどちらかと言えばサヨクの定番の文句だから、あまり好きではないが、もはやまったく身近に戦争を体験しなくなった国民はやはりある時突然暴発する危険な国民になりつつあるのではないか。全ての戦争に反対し、戦争に関わることを避け続ければ、いずれは破滅的な戦争で滅びていく国民になるような気がする。戦争も取捨選択して経験していかなければ普通の国、国民ではない。

 台風が自分の生命に危機をもたらすものと考えれば、まず出歩かないこと、ましてや屋根など登らないことが肝要である。どうして毎回屋根から滑り落ちて死ぬ人が出るのか、不思議で仕方ない。台風の進路にないからといっていい気になって北海道や九州でゴルフやってるとその内大変なことになるだろう。

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