夏休みと喪失感(平成14年8月18日)

 夏休みと喪失感と言っても、♪麦わら帽子はもう消えた♪の吉田拓郎の夏休みという歌のことではない。今年の夏休みは極めて充実したものになるはずだった。普段からまともに休まず、会社に入って以来、本当の意味での骨休めをしたことのない私としては、本当はくた〜っと休んでみたい気がしていたのだが、長野県知事選に首をつっこんでしまったおかげで、極めて忙しいがしかし充実した休みになるはずだった。そうそう、私にとっての”休み”と言う言葉は仕事をしない日というのと同義語であり、花岡氏の選挙を手伝う動機として、産経新聞の元花形記者が恥ずかしい選挙をすれば、産経新聞のマイナスイメージにつながるという感覚を持っていた私としては、結局休んだ事にはならないのだった。

 長野県知事選の各候補者はそう言う意味では苦労している。選挙戦スタートの8月15日と言えば、お盆休み真っ盛り。動員から何から、それこそみんな休みでままならない。休みを潰して選挙戦につっこんだ私などは、もう何がなんだか茫然自失の状態に陥ってしまった。もっと早く降りてくれてれば、同じ長野に行くのでも、最初から、観光とか三三七拍子に飲みに行くとか、日にちを選んで、もっと楽しい思い出作りに行けたはずだ。あるいは、降りていなければ、告示日からの2日間、死にものぐるいでポスター貼りに走り回り、それはそれは充実した日々を送れるはずだった。

 田中でもなければ、県政会のロボットでもない知事を目指して立候補した花岡氏を応援しようとしたのは、会社の先輩に事務所開きに連れて行かれてからだ。それまでは、私も花岡さんは何をトチ狂ったんだろう、反田中が長谷川で決まりなら、花岡さんの立候補は余計な事だと思っていた。出来たら降りてくれた方が、会社のためにもなるし、本人も傷つかなくて済むだろうと思った。当選しても、惨敗しても、会社にとってはマイナスだと思った。県政会と有力なパイプのある、ある社長さんと電話で話した時も、私自身が上のような話をしたものだ。ただ、その社長に、花岡さんはポスターも満足に貼れないだろうし、数千票しか取れないんじゃないのと言われた時は少しカチンと来た。

 会社の先輩に事務所開きに連れて行かれ、そのあまりにも何の準備も出来ていない姿を見て、悪戦苦闘している秘書の人と話をしてから、少し気持ちが変わった。あれは革労協のシンパだという話を聞き、そんなものを押し立てて居るのかと思った事も心の変化をもたらした。何とか恥ずかしくない選挙戦を戦って欲しい。そしてうまく風が起きればいいところに行けるんじゃないか。そのためにはとにかくポスターを貼ること。そう思っていろいろ努力を開始した。翌週の日曜も長野入りし、いろいろ手伝いをして、あの12日のパーティー。森喜朗前首相の「この一番大事な時に、なんで花岡さんを東京に引っ張って来るんだ。中條さんあんたが金集めすればいいんだ。1万円の会費を払ってよしとするのではなく、ここにいる一人でも多くの人が長野に行ってポスターの1枚でも貼るというのが本当の応援だ」という鬼気迫るエールに感激し、評論家三宅久之氏の、「私も長野入りして選挙カーに乗りたい」と言ってくれた話に感激し、首都圏の某市議・区議さんの、告示日にはポスター貼りに応援に駆けつけてくれるという申し出に感激し、今後の展開に力強い手応えを感じた。しかし、その盛り上がりが長谷川陣営の焦りを誘ったのかもしれない。それはそれはもうあの手この手の大攻勢だったのだろう。最後の一本化工作が行われたのはその翌晩遅くのことだ。花岡さんの実家には、深夜黒塗りの車が何台もやってきたことが近所の人に目撃されている。きっと電話も凄かったのだろう。事務所を引き上げるまでは戦闘モードだったのが、選対本部長や事務局長、推薦人代表に相談する前に結果的に落城してしまった。

 今更何を言っても始まらない。降りてしまったのは事実なのだから。罵詈雑言に書いたように、金などもらってないし、もらっていたとしたらただじゃ済まさない。そうだな、精神的苦痛を受けたとして、100万くらいは出してもらわないと。しかし、金で解決しようとすれば、それこそ花岡さんは蹴ったはずだ。しかし、世間はそうは見ない、松本あたりでは、高校生まで、ありゃ県政会に金もらったに決まってるせーと言っているらしいし、自民党の某代議士が1億円用意したなんて話もある。事務所に来る苦情電話も一主婦なんていう葉書も金もらったと決めつけている。政治には往々にしてあるなんていうのは、旧世代の密室政治の話で、深夜から早朝にかけての密室で決まったということだけでも、これはもう、花岡さんは男を下げてしまった。あれだけ批判していた陣営と手を組むなんて、政治のプロならいざ知らず、我々素人はもう信用しないだろう。仮に花岡さんが今後他の選挙に出ることがあっても、もう応援はしない。私の心にぽっかり空いた穴はそう簡単には埋まらないのだ。

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