今日はいいものを見た(平成14年4月27日)

 今からちょうど20年前の冬の夜、私は高校3年生で受験勉強をしていた。時間は10時頃。突然、外で女の人の悲鳴がした。私はすぐ2階の窓を開け、大声で叫んだ。ほぼ同時にお袋も玄関に飛んできて大声で叫んだ。私が、階段を駆け下り、サンダルをつっかけ表へ出ようとした目の前を通り魔が走って行った。私が追いかけると、犯人は路地に置いてあった車に飛び乗り、急発進して逃げた。しばらく追いかけつつ、車のナンバーを暗記し、警察に連絡しようと家に戻った。ちょうど、被害者の女子大生のおねえさんを抱きかかえて、お袋が玄関に入るところだった。おねえさんは、犯人ともみ合った時に、手でナイフを握ったらしく、掌から血を流していた。私は警察と救急に電話し、駆けつけた警察に状況を説明した。パトカーが到着するに及んで、ようやく近所の人たちが様子を見に表へ出てきた。女の悲鳴が聞こえても出てこなかった人たちが、パトカーが来ると何事かと出てくる。今の日本は大体そんなもんだろう。

 今日の訪店の帰り道、夜7時頃、宮城県本吉町内の商店街を走っていた。私の前には軽自動車が1台。その100mくらい前のカーブで事故は起こった。軽のワゴンが対向車線へ大きくはみ出し、急ブレーキを踏みつつすぐ自分の車線に戻ろうとしたが、対向車と接触したのだ。その瞬間、凄い音とともに火花が散った。私も前の軽も車を寄せて止め、事故った車が動くのを待った。しかし、エンジンかミッションをやられたのか、動かない。押しに行こうかとも考えたが、止まっている2台の事故車の間を、飛び散ったガラスやプラスティックをバチバチ踏みつけながら、対向車線から車がやってくる。よく見れば、すぐ向こう側にガソリンスタンドがあり、お兄さん達が出てきた。きっと動かしてくれるだろうと思い、動くまで待とうと思って車の中から見ていた。すると、通り沿いの人たちが、懐中電灯や竹ぼうきを持って来て、交通整理しながら、事故の後片づけを始めたではないか。ある程度掃き終わったところで、通してくれたので、私はその場を去った。

 女の子が通り魔に襲われていても誰も出て来ないところがあると思えば、事故の後始末をみんなでやる商店街もある。今日は昼間、近頃の若い奴は、言われないと何もしないという話をしたばかりだった。先日、会社の内務部門の気のきかなさに腹を立てたばかりでもある。竹ぼうきで掃除するおばさん達の姿を見て、20年前の寒い光景を思い出し、事故とはいえ、逆にいいものを見せてもらったと思った。

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