ずっと産経を読まなかったつけか?(平成14年10月25日)

 誘拐犯が銃口を突きつけながら受話器を持たせ、「おじいちゃんおばあちゃん早く身代金を持ってここに来て頂戴」と言わせているところを想像してしまった。

 夜9時から、横田めぐみさんの娘とほぼ確定した北朝鮮の少女のインタビューが、フジテレビで放送された。夕方4時に行われたインタビューを急遽編集して放送しているためか異常にあらが目立つ。翻訳上の些細なミスや編集上のミスはまあ仕方ない。朝日・毎日と共同でインタビューしたということで、翌朝には両紙にも独占インタビューとして載るわけだから大急ぎの作業だったのだろう。そんなことはどうでもいいのだが、問題はインタビュー自体の内容と、番組としての構成だ。一言で言えば、非常に脳天気なつくりだという事だ。インタビューに携わった人達も、東京で編集した人達も北朝鮮がどんな国か分かっていなければ、なぜインタビューを許可するのかという背景についても全く思い至っていないのではないかと思う。問題をまだ本当に生きているのか死んでしまったのか分からない横田めぐみさん本人から孫へとそらそうとしているとは思わないのだろうか。報道特別番組と銘打ちながら、ワイドショーのためのワイドショーと化していた。今この大事な時期に独占インタビューをしたいがための功名心が見え見えに思えた。平沢勝栄や西岡力が出てこなければ、横田さんのご両親まで転んでしまいそうになっていた。これでもかこれでもかと孫の映像を見せれば、家族会代表夫妻といえども孫かわいさに北に行ってもいいと思わされてしまうだろう。西岡氏が言っていたように、横田めぐみさん本人あるいは、死亡と伝えられたその他の被害者も含め、全ての拉致被害者を取り戻すことが拉致問題の解決なのだ。

 日本では「小泉バカヤロー死ね」とか(あまり書きたくないが)「天皇死ね」と言っても、何事も起こらないが、北朝鮮で「金正日死ね」と言ったらどうなるか。百歩譲って銃殺されなかったとしても、間違いなく強制収容所送りだろう、って言うかやっぱり銃殺だな。飢饉で国民が飢えているから米を送って欲しいと言いながら、このキム・ヘギョンという少女のふくよかな顔を見ると困ってないんじゃない、米いらないでしょって嫌味の一つも言いたくなる。大人になったら党で働きたいとか金日成総合大学に行きたいというってことは間違いなく親は朝鮮労働党もしくは国家機関のエリートである。金日成総合大学とはたとえて言えば、戦前の日本で、東大レベルの学習院大学と言ったらいいだろうか。ちょっとニュアンスが違うかも知れないが、ただ頭がいいだけでは行けない、ただエリートなだけでは行けないところだ。間違っても審陽の日本領事館に逃げ込もうとした脱北者の子弟達が能力があっても入れるところではない。北朝鮮は大韓航空機事件やラングーン事件を韓国のでっち上げと言っている。しかし、金賢姫や安明進が仮に韓国の安企部のでっち上げだとしても、中国で続発する脱出者騒動も、金正日自らが認めた拉致事件も、工作船も証拠の揃った疑うべくもない紛れもない北朝鮮の犯罪である。さらには今回核開発まで認めた。全ては同じ国の所業なのだ。その同じ国がこの少女を日本のマスコミの前に、何の前提もなく自由意志でしゃべらせるためにカメラの前に出すと本気で思っているのだろうか。当然プロパガンダの一環と考える方が筋が通っているはずだ。安藤優子がいくら弁明しようと、北朝鮮に踊らされたことは疑うべくもないことなのだ。ついこの間まで、産経と一部週刊誌以外の世界では拉致など存在しなかった。私たち産経読者の持っている北朝鮮観とそうでない人達の間には意識の上で埋めがたい差がある。このインタビュー番組がどういう影響をもたらすか考えずに急いで放送してしまった影響が悪い方向に向かないことを祈るばかりだ。

 それにしてもニュース・ジャパンでスポルト前のニュースがこの件だけってどういうことだ?今日は石井紘基民主党代議士暗殺事件があったというのに。それより先に野球かよ、いい加減にしろよ。このことだけみても、キム・ヘギョンへのインタビューが手柄をたてたい一心の忌むべきスクープ至上主義の産物だということが分かる。日本の国会議員が殺されるニュースよりプロ野球優先?フジはどうかしてる。

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