最近とてつもなく軽くなった言葉・・・「拉致」(平成14年10月18日)

 10月15日、北朝鮮に拉致されていた被害者の内、生存確認者5人が帰国した。それ以来連日、テレビのニュース・ワイドショーはこの報道一色なのだが、その間当然の様に「拉致」「拉致」と繰り返される。そう、彼らは海辺から袋詰めされて無理矢理連れて行かれたのである。その犯人の元から一時的に親族友人に会わせてやるとこちら側に戻されたというのが実情である。金日成バッジは外さないものの、幸いにして本人達からは金日成や金正日、あるいは北朝鮮という国に対する賛美の発言は聞こえて来ない。しかし、拉致時の状況などには一切触れないし、10日くらいで帰りたいなどと言うに至っては、やはり北朝鮮の素晴らしい教育の成果が如何なく発揮されていると思うしかない。

 ショッカーに誘拐されて怪人に改造されたようなもの、あるいはあの新潟の9年間監禁されていた少女が、誘拐した男が気に入って、あるいは脅かされて、一回家に戻るがその男の所に戻ってしまうようなものである。ショッカーならぬ北朝鮮に拉致誘拐された被害者達は、現地に子供がいるからと滞在期間を短くして北朝鮮に戻りたいと言っているようだが、これだけ凶悪な犯罪被害者であるにも関わらず、あたかも単なる行方不明者が突然帰って来て、親族友人知人の前に現れたかのような錯覚を起こしそうな報道の洪水だ。拉致しても本人がOKならもはや拉致ではないのか。後付でOKなら誘拐じゃないのか。拉致された被害者がまるで行方不明者のように振る舞い、周りの人が喜んで歓迎するのを見ていると、まるで拉致が犯罪ではないかのように見えてくる。金日成バッジをつけて堂々と凱旋した彼らはやはり北朝鮮の広告塔のように見えてしまう。そういう人だけを生存者として一時帰国させたとしか思えない。結婚目的誘拐罪なんて罪はもう成立しないんじゃないか。誘拐しても被害者を洗脳してしまえば犯罪は成立しないのか。何かがおかしい。

 毎日テレビの報道を見ていて、拉致という言葉がとてつもなく軽くなってしまったような気がする。オウム信者の場合はまだしも入会は自分の意志だった。しかし、北朝鮮に拉致された人々は袋詰めにされて有無を言わさず知らない国へ連行されたのである。拉致時の状況を語ってもらうには長い長い時間が必要だ。そのためには人質のいない状態でなければならない。やはり政府は全部返さなきゃ金はやらないという姿勢でなければならない。昨日、北の核開発の問題が明らかになったが、とにかく全部解決しなければ金は出さないと言う態度で臨まなければならない。とにかく向こうは金が欲しいのだ。国交正常化交渉ありきなんてのは絶対にだめだ。全ての問題の解決が前提条件である。メンツを重んじる国だから?ふざけるな。日本の植民地支配が悪かった?ふざけるな。じゃあ、韓国や台湾や中国が日本人を拉致したか。中国はミサイルを東京に向けているかも知れないが日本上空に試し打ちなどしていない。強硬な姿勢を続けているとそれこそテポドンやノドンが飛んでくるかも知れないが、その脅しに屈したのでは日本は属国になるしかない。ましてもしも向こうがミサイルを撃てば、本当に戦争になってしまうのだから、そんな体制崩壊を早めるようなことをするはずがない。即刻有事法制を整備し、防衛体制を強化して、日本が国を国民を守る強固な意志を北に伝えなければならない。肝心なのは拉致という言葉の重みをもう一度噛みしめ、北の犯罪を全て明らかにすることだ。拉致という言葉を軽くしてはならない。

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