小泉純一郎訪朝に想う(平成14年8月31日)

 昼間は全然ニュースを見ていなかったので知らなかったが、小泉首相が9月17日に訪朝し金正日と会談するという。驚天動地のニュースである。「何しに行くんだ」と思わず叫んでしまった。そう、一体何しに行くんだろう。首脳会談というからには何らかの大きな前進がなければならない。今までの事務レベルや赤十字の協議とは違うのだ。ニュースで見る限りは、拉致問題での大きな前進と、日朝国交正常化への期待が語られているようである。包括的交渉を高度な政治レベルで一挙に決断してしまおうということだとの観測もある。しかし、果たして金正日との交渉で拉致問題が解決するのだろうか。絶対に解決しやしない。秘密警察国家である北朝鮮が、行方不明者と言い換えようと何だろうと、拉致被害者の存在を知らないはずがないし、確信犯に決まっているのであるから、絶対に出すはずがない。最後までのらりくらりとかわしつづけるだろう。拉致問題の唯一の解決方法は北朝鮮現体制の崩壊である。北朝鮮は今、経済体制の変革をしようとしていると言われている。しかし、それは国民がいよいよ食えなくなっているからで、現在のところ、金王朝は絶対護持しなければならない体制である。大体、他国の人間を拉致してすり替わるとか、スパイ養成のための教官にするというのは、国家的な規模でなければ出来ない。つまりは国家的な犯罪である。体制が崩壊する以外に拉致被害者の存在が認められることも、釈放されることもありえない。ナチスが崩壊するまではアウシュビッツの存在は公にならなかったはずである。

 日中友好なんていらないと前に言ったが、日朝国交正常化なんてもっといらないのである。中国や韓国を相手にするだけでもこんなに土下座外交を展開しているのに、そこにもう一つ北朝鮮が加わるというだけの話だ。本当なら中韓とも断交して欲しいくらいなのに、もう一国面倒な国と正面からつき合わなければいけない。国交のない今なら、極端な話、放っておけばいいのだが、友好関係ということになれば、今まで以上に食料・経済支援をしなければならなくなるだろう。しかも脅かされて。小泉純ちゃんの焦りが目に見えるようだが、これが人気取りのためのパフォーマンスだったとしたら、将来にとんでもない禍根を残すことになりかねない。小泉首相には金正日に対して、言いたいことを徹底的に言ってきて欲しい。くれぐれも国交正常化ありきの態度で臨まないように祈るばかりである。

 それにしても、各マスコミの拉致問題に対する態度は隔世の感がある。産経が新聞協会賞をとるまでは、知っていても口にしなかったのに、今では拉致疑惑は当たり前になっている。産経の読者は昭和50年代に産経が取り上げため、北朝鮮(あるいはそれらしき国)が日本人を拉致していることを知っていただろう。それ以外では、私の知る限り、新潮や文春を別にすれば、週刊ヤングジャンプで昭和61年頃載った「ハッピーピープル」(釈英勝著)というマンガを読んだ人だけだろう。このマンガの単行本第3巻に出てくる、I LOVE NIPPONというタイトルだったか前後編の2回にわたって描かれたのが、集英国という架空の、しかし誰が見ても北朝鮮としか思えない国の連中による日本人拉致とすり替わりの話である。当時私は当然あることとして読んでいた。しかし、産経を読んでいない一般の読者は創作或いは他国でのモデルがあるとでも思っていたのではないだろうか。拉致問題を今平然と語るマスコミの連中が、このマンガが世に出た15年前に騒いでいれば、日本のありようも、日朝関係ももっと別なものになっていたのではないだろうか。この問題は、今年明徳義塾が優勝したとき、監督を勝負師と評して、10年前に批判した、星陵松井を5連続敬遠したことまで賞賛しているのと同じ事だ。10年前には北朝鮮を非難するなどもってのほかだったのに、いつの間にか拉致問題を昔から取り上げていたかのような顔をしている。つくづく嫌な連中だと思う。拉致問題を思うとき、やっぱり新聞は産経だと再認識させられるのである。

 それはさておき、何しに行くのか知らないが、小泉純ちゃんにはくれぐれも、北朝鮮に懐柔されないように、誘惑に負けないように願いたい。金丸信や野中、加藤のようにはなって欲しくないのである。出来れば、テポドンのことも含めてケンカしてきて欲しい。

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