アフガニスタン内戦はこれからが本番(平成13年12月8日)

 アフガニスタンでは米軍の空爆開始2ヶ月にして、タリバン政権が消滅し、暫定政権を樹立するところまで漕ぎ着けている。私も含めて、大方の予想を裏切って、今にもアフガン問題は決着しそうな勢いである。朝日の田岡などは、大規模な地上軍投入など物理的に無理だから、米軍は旧ソ連のように泥沼のゲリラ戦に引きずり込まれるとしたり顔で言っていたものだが、地上戦は代わりの連中がやってくれた。しかし、この代わりの連中がくせ者である。それこそ何も知らない人はタリバンが崩壊すれば、アフガンのイスラム原理主義者はいなくなるように思うだろうが、ところがどっこい、北部同盟を構成する連中こそ宗派は違えど、彼らもまたイスラム原理主義者なのである。この辺の事情はアフガニスタンの内戦史を描いた私が現在最新お奨めHPとしている ソ連介入後のアフガニスタン内戦に詳しいので是非読んで欲しい。

 オマルやビン・ラディンなどは論外の過激派だが、ラバニ前政権大統領もソ連軍打倒に立ち上がったムジャヒディンだったのだから、アメリカが一歩対応を間違えば、すぐ第2のオマルになるだろう。さらに問題なのが北部同盟の中のドスタム将軍派だ。既にカブール進攻や暫定政権でのポスト問題などで、同盟内の足並みを乱し始めているが、ドスタムという男、寝返りに次ぐ寝返りを繰り返して来たまさに、前時代の軍閥そのもののような男だから、今後、この男の動きがアフガンの内戦終結の一つの鍵を握っていると言えよう。

 形の上では国連主導で暫定政権が動きだし、アメリカにとっては一つの目標であったテロリストをかくまう無法者政権タリバンを倒して、後はビン・ラディンを捕捉するだけと見えるが、こんな暫定政権がとても安定して続くとは思えない。日本人なら、みんな戦争は嫌だから、一刻も早く平和で民主的な選挙をやって安定した政権を作りましょうということになるのだろうが、何せ20数年も内戦に明け暮れてきた国である。しかも、カンボジアと違い、後ろに利害関係を持つ国がひしめき合っている。アフガニスタンがなぜこんなに内戦に明け暮れなければならなかったかと言えば、まさにこの背後関係が問題なのだ。ロシア及び中央アジア、パキスタン、インド、イラン、アメリカ、サウジアラビアそして中国。これだけの国の利害が複雑に絡み合い、モザイクのような民族構成と絡んで今後の権力闘争に発展することは必至である。特にカシミール問題を抱える印パ紛争、中央アジアの石油天然ガス利権は今後も当分尾を引くので、確実にアフガニスタン政情に影響を与える。

 多国籍軍或いは強力なPKFの派遣により、力で押さえ込まねば、いつ各派がドンパチ始めるか分からない。結局平和で民主的な選挙による政権など自然な状態からは生まれないのだ。これからは中立のイスラム国家で、しかも民主国家であるトルコの役割が重要になってくるだろう。トルコを主体とする多国籍軍を派遣し、日本を含む世界各国が利害を超えてPKFを派遣し緩衝勢力として存在することが肝要である。間違ってもアフガニスタン国民の自主性などに期待してはいけない。なぜなら、アフガニスタン人などというものは存在せず、そこにいるのはパシュトゥン人、ウズベク人、タジク人、ハザラ人なのだから。

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