相変わらず他人事の日本(平成13年9月15日)

 2年程前に、麻生幾氏の「日本侵略」という小説が産経新聞に連載された。まだ、単行本化はされていないようだが、旧ユーゴ、南ア、アラブ系などのテロリスト10数人が協力関係にあった北朝鮮の研究所から細菌兵器(天然痘ウィルス)を奪取して日本に潜入し、新宿の雑踏の中でばらまくテロ攻撃を行い、最後には総理府など危機管理中枢のビルへの爆破テロを行うと言うものだった。日本の政府、国民のお人好しぶりを見事に描き出し、内閣情報調査室の警察官僚や医師の英雄的活躍があってようやく解決するのだが、果たして現実に起こったら、そううまくいくものかなと思った。そのまま、日本が滅亡してしまうのがおちじゃないかと思った。

 今の日本(政府、マスコミ、一般市民含めて)のこのテロに対する対応、反応はおよそ人ごとである。狙われたのはアメリカ領土内のビルだが、そこにいた人はアメリカ人だけでなく、多国籍なビジネスマンであり、日本人もたまたま多数が助かったがそれでも20人以上が今も行方不明だ。これはアメリカ領土をねらったのではなく、やはり、資本主義西欧文明をねらったものとしか言いようがない。つまり、日本も当然大きな意味でターゲットの中に入っているのである。そもそも日本人はペルーの日本大使館占拠事件に象徴されるように、国際テロ組織からターゲットにされている。日本人はどうも自国領土が犯されない限り、自分が狙われているとは思いたくないようだ。

 今アメリカがやろうとしていることは、テロの根っこを絶とうということであり、テロは高くつくということを、テロリスト並びに支援国家に思い知らせようということである。集団的自衛権云々ではなく、自分を含むこの社会が狙われているという認識に立てば、今回の事件は湾岸戦争などとはおよそ性格を異にするものだ。ダッカハイジャック事件以来の日本のイメージを挽回する絶好のチャンスでもあり、国会や政府内、マスコミで、不毛な議論が繰り返されないよう希望するものである。

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