ま、所詮日本外交なんてこんなもんさ(平成13年5月5日)

 北朝鮮の独裁者、金正日の息子金正男と思われる人物が、ドミニカの偽造ビザで不法入国した。李登輝台湾前総統にビザを出す際にはあれほど渋った政府が、今回は極めてスピーディーに淡々と国外退去処分にした。理由は今回の不法入国が犯罪目的でないからだというが、過去に2回不法入国歴があるという事自体がそもそも犯罪ではないのか。大体、未だに国交正常化せず、過去にはパスポートに北朝鮮を除く全ての国で有効と書いてあったほどの国である。大韓航空機爆破事件やラングーン事件を始めとして、ナチスドイツ以上のテロ国家である北朝鮮の最高指導者の息子かもしれないという人間を、ろくろく取り調べもせずすぐ返す神経は世界中の物笑いの種だろう。

 私は世論調査で80%の高支持率を得ている小泉純一郎首相をもちろん支持しているが、やはり今回の措置は納得がいかない。様々な情報によれば、今回の不法入国のたれ込みはCIA関係だというし、ある関係者によれば、今回の入国の本当の目的は日本で旧知の国会議員と会って政治上の取引をすることだったという話もある。そもそも、"金正男と思われる"と言うが、北朝鮮の人間で、同行者までブランドに身を固めて、財布に札束がぎっしりなどという人物はそうそういない。どう考えたって金正男かそれと同等以上の地位にある人間だろう。今回北朝鮮は情報を否定して重大な挑発といい、北京も完全沈黙していたのだから、この際、法に則って60日間ぎりぎりの拘留措置をとり、徹底的に調べ上げればよかったのではないか。その間マスコミで連日報道されるだけでも、拉致問題をはじめとする対北問題に関する国民の関心を盛り上げるのに十分な効果がある。会う予定だった国会議員というのもあぶり出されてくるだろう。小泉、田中独自外交を世間に示すには絶好のチャンスだったのではないか。そうしたメリットを全てかなぐり捨てて、わずか4日間で返してしまったのはどう考えたって高度の政治的判断である。

 堂々と靖国公式参拝を掲げ、教科書問題でも毅然とした態度をとる小泉首相が、北朝鮮との間でもめ事を起こしたくないとか、恩を売りたいとかそんな理由とはどうしても考えたくない。レイテ島に遺骨収集に行こうとしていた人が、当の国会議員かどうかは分からない。しかし、北朝鮮との取引をしようとしていた国会議員が、もし自民党有力議員であれば、せっかくの高支持率に水を差すばかりか、政治が大混乱に陥る。そんな懸念から今回の早期国外退去という高度な政治的判断が行われたのではないか。本当ならこの機会に親北朝鮮の売国奴政治家をあぶり出して欲しかったのだが、そんなことも望めないのが今の日本の政治なのだろう。

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