ゴルフは鬼っ子、日本の青少年は首相の*赤子(平成13年2月23日)

 ある日、私はゴルフをやっていた。さあスタートという直前、一応念のため、会社に何かないかと電話をかけた。するとたまたま電話に出た人が、未確認情報だが上司の身内が亡くなったらしいという。未確認情報なので、我々はスタートし、*ハーフが終わったところで、もう一度会社に電話すると、今度は確認が取れ、しかも通夜はその晩だという。ここで、その上司の直属の部下数人がプレーを放棄して帰った。残った我々はプレーを続行し、残り2ホールくらいのところで、もう帰った方がいいんじゃないかという後輩に、ここまでやったんだから、*ホールアウトしようと言って、最後までプレーして帰った。その後、皆それぞれの方法で礼服を調達して通夜に参加したのは言うまでもない。

 その日、我々は*総握りというのをやっていたが、ハーフで帰った連中がいたので当然不成立に終わった。

 さて、問題の海上における交通事故の時の森首相の対応だが、アマチュアの我々ですら、未確認情報の場合はとりあえずハーフくらいやる。何ヶ月振りかでみんなで集まってゴルフをしたのだからなおさらだった。亡くなったのは、少なくとも自分の家族ではない、或いは直属の上司本人でもない。出来ることと言えば、通夜或いは告別式に参列して冥福を祈るくらいのことである。今回問題を複雑にしたのは、

@事故の当事者が日本の高校生の船と、あろうことか日本人が忌み嫌う米原潜だったこと

A事故が起きたのがあろうことか日米の因縁の海域である真珠湾近海だったこと

Bあろうことか森総理が国民の大半が贅沢なスポーツと忌み嫌うゴルフをやっていたこと

Cしかも、同伴者と賭けゴルフをやっていたらしい。

 @ABを勘案すれば、たとえ未確認の状態でも総理はプレーを中止して帰るべきだった。やはり森さんは脇が甘いのである。そしてCに関して言えば、大半のアマチュアゴルファーは常識の範囲内で握っているのであり、その金額は普通のサラリーマンが会社の同僚とやる麻雀で動く金より遙かに少ないのである。

 まあ、それはさておき、@ABをそれぞれ別の状態に置き換えてみよう。

@事故の当事者が日本の普通の漁船と日本人が友好国として信じて疑わない中国の調査船

A事件の海域が日中双方が領海を主張する尖閣諸島近海

B首相はスキーをしていた

 こうなると、だいぶ反応が違ってくるだろう。

 さて、私が言いたいことは危機管理意識云々ではなく、この事件によって我々アマチュアゴルファーが蒙った被害についてである。ゴルフは別に贅沢な遊びではない。私に言わせればスキーの方がはるかに贅沢である。これで、またゴルフは白い目で見られることになるだろう。ああ、嫌だ嫌だ。でも私はゴルフをやめないぞ。

 そうそう、表題はもう一つあった。総理大臣にはプライバシーはない。たまに休みをとってゴルフなんてもってのほか。仮に日本人の高校生がロサンゼルスで車に轢かれたって、首相官邸に立て籠もってアメリカ政府に抗議しなければならない。なんせ、国民はみんな首相の身内なんだから。

<旅人用語解説>

*赤子(せきし)=本当の子供ではないが、等しく子供のような存在であるということを表す言葉。戦前には天皇の赤子と言う言葉で日本国民を表したこともある。

*ハーフ=ゴルフは18ホールの合計スコアで争う競技だが、前半9ホール、後半9ホールと分かれている。この前半或いは後半のひとかたまりをハーフという。アマチュアの場合は、ハーフ終わると昼食を取ることが多い。(北海道除く)

*ホールアウト=18ホール全部終了してあがること。

*総握り=握るとは握手すること、或いは*チョコレートを握ることか。従って総握りとは参加者全員で握手(賭けが成立)すること。

*チョコレート=ゴルフに於ける隠語で賭け金のこと。1打につきチョコレート何枚とか言う。

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