フジモリ大統領をペルーへ帰していいのか(平成12年11月23日)

 世の中が内閣不信任騒動で大騒ぎの11月20日、その影でペルーのフジモリ(前)大統領がAPECの帰途、本国の政変からか、日本にそのまま滞在していることが小さく報道された。その時私は、「もしかしたら亡命するつもりなんじゃないか?」と言っていた。みんな「まさか」と言っていたが、どうやらそういう風向きになって来た。

 定住したいとか、日本国籍があるとか日に日に発言をエスカレートさせつつ、政治亡命の出来ない日本になんとか居続けようと必死で頑張っている。それに対して我が産経の「主張」では定住を歓迎しつつも、「ここは母国にいったん戻り、大統領としてのけじめをつけることが、ペルーのためであり自らのためでもないだろうか。」と言っている。何故、こんな日本呆けした事を言うのだろう。フジモリ氏以前のペルーはずっと軍政であり、もっと言えば、そもそもスペインがインカ帝国を侵略滅亡させて作った国である。首相外遊中に不信任案を提出するのはだまし討ちのようでいけないと言って、土日を挟んで時間を作ったあげく、負けてしまうような正直者の国とは違うのである。

 フジモリ氏は帰るなら、もっと早く帰るべきであったし、APECには出ず、政変の収拾にあたるべきであった。おそらく、ブルネイに出かけることを決めたときから、ペルーには帰らないと決めていたのではないだろうか。トゥパク・アマルやセンデロ・ルミノソをほぼ壊滅状態に追い込み、6500%もあったインフレ率を7%まで抑え込んだ大功労者であっても、権力から滑り落ちれば政敵にとっては犯罪者である。国に帰っても命の保証はない。そんなことはないだろうと考えるのは、日本の常識である。日本に居たって危ないものである。一市民として暮らしていれば、テロに襲われる危険は十分にある。しかし、準公人として暮らしていれば、その危険は帰国の比ではないだろう。

 フジモリ氏は、「私はペルー人」と強調しながら、日本領事館に出されたとされる自らの出生届を根拠に、日本に保護を求めているのだ。しかし、一国の大統領を務めた人物が簡単にそれを認めるわけにはいかない。日本政府の立場も考慮しつつ、駆け引きをしていると見るべきだ。例によって正直者ぶりを発揮して、フジモリ氏をペルーに帰すのか、このまま実質的な亡命状態にして、保護するのか。私は帰すべきではないと思う。それどころか、フジモリ氏の手腕を日本の政治に活かすべきだと思う。

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