世代が替わると云うこと(平成12年10月9日)

 私たちの年代がまだ小学生くらいの頃までは、世の中そんなに豊かじゃなくて、千葉駅前なんかにも、傷痍軍人がいたのを覚えている。ほとんど覚えていない人が多いだろうが、白装束で、片足が無くて、ハーモニカ吹いてる姿が目に焼き付いて離れない。当時、実は傷痍軍人の格好をして実際はただの乞食という人もいたらしいが、今は誰もそんな格好をして乞食などしないだろう。いや、そもそも乞食自体、見かけることがない。ホームレスならいるが、彼らは乞食ではない。物乞いなどせず、自分でえさを探すからだ。

 これは、そもそも30年くらい前の話だから、その頃50才だった人は今80才であり、終戦時は、25才だった。私はたまたま、年寄りっ子のため、子の世代だが、普通30代半ばはこの人達の孫の世代である。親から直接体験を聞くのと、じいさんの話を親が聞いて、さらにその子に聞かせるとなると、もうほとんど話はつながらない。どこか別の世界の話か、そもそも話を信じないか、端から親がそんな話をしないかどれかだろう。バブルの頃は、日本がアメリカと戦争して負けたというのを信じない若者がいたとまことしやかに言われているが、案外いたのかもしれない。それくらい、日本は豊かになったということだ。

 今、マンガ「あぶさん」を1巻から順に読んでいるが、あぶさんが入団して最初の数年間(昭和40年代半ば)のシーンはまだまだ貧しかった日本のシーンがあちこちに出てくる。思えば、自分だって、家に電話が入ったのは小2の時だし、小6で家を建て替えるまでは終戦後のバラックみたいなところに住んでいた。服が破れれば母親が繕ってくれて、それを着ていても別に恥ずかしくなかった。今の子ども達は生まれた時からFAXがあり、高校生はみんな携帯を持っている。そして、今の高校生は先程の世代から見れば、既に曾孫の世代である。戦前は総て悪とする風潮の中で、既に3世代目が育っている。団塊の孫達には団塊そのものも別世界であろう。

 ハングリーなんて今時流行らないのかもしれないが、アメリカと戦争をするなんて大それたことをしたのも、日本を高度成長させたのも、みんな戦前の人達であり、日本のたがをはずれさせ、破滅に導いているのはその次の世代である。それらを全く知らない世代が、危機感を持つのか、目先の豊かさに溺れるのかで今後の日本の運命は決まってくる。

今日のコラムのトップへ

旅人のほーむぺーじ トップへ