終章

アフガンの地に平和は来るのか。



 これまでごらん頂いたように、20年以上続いているアフガニスタンの混乱は肯定的なものを何も残さなかった。残ったのは瓦礫の山と厳しすぎる生活、女性の迫害、アヘンの増加、密輸の横行、イスラムテロ、そして関係国のエゴだけだ。この国が本来の姿に、20年以上前の姿に戻ったとき、初めて「平和」になったといえるであろう。だが、まずは戦闘をなくすことが先決である。ではどうすれば戦闘はなくなり、「平和」への第一歩を踏み出せるだろうか。以下は今回もっとも参考にした文献『タリバン』の最終章を自分なりにまとめてみた。

 まずはタリバン・マスードの両勢力に流れている各国の武器援助をやめさせることだ。なによりもこれが一番重要である。そして同時に、アフガニスタンに「平和」が戻ることは、近隣諸国にとって利益になる、ということを理解させなくてはならない。「平和」になり安定した政権が出来れば、麻薬の流入、運送マフィアによる密輸、イスラム過激派の流入を阻止できる。中央アジアは最短距離で、しかも安全確実にパイプラインを海につなげることが出来る。

 さらにタリバンとマスードに分割統治と合同政府を樹立させることだ。もはやマスードがアフガニスタン全土を支配することは不可能だし、またタリバンが全土支配に成功してもマスードたちは反政府ゲリラになるだけだ。となると、いまの支配地域を彼らに統治させ、互いの代表が集まって合同政府を樹立する以外に道はない。これを実現するためにも武器の禁輸と近隣諸国に対するアフガン政策の見直しが必要なのである。

 このイニシアチブを取れるのは、日本しかいない。もちろんアメリカやロシア、EU諸国の協力なくしては各国を説得するのは無理だと思うが、米・露・欧はジハードの時に介入しすぎた。さらにこれらの国々はタリバンやビン・ラディンとの関係が悪すぎる。その点日本はまだ中立だし、経済的な影響力を使えば近隣諸国や各勢力に働きかけることはできないか? もちろん、日・米・欧にとってもこの地域の安定はそれなりの利益をもたらす。アメリカとEUは麻薬とイスラムテロに困っているし、日本は中央アジアの経済開発により、天然資源を手に入れるチャンスなのだ。

 とはいうものの、これはかなり楽観的な考察である。数年でどうにかなる話ではない。アメリカは相変わらずビン・ラディンに固執しているし、近隣諸国は目先の「恐怖」にとらわれすぎている。しかし、例え現実がそうであろうとも、これら先進諸国、そして日本は関係国とともにこの問題に積極的に取り組むべきなのである。なにも取り組まずに、このまま放置して好き勝手にやらしてしまったときの代償は、そうとう高くつくだろうから。。。





参考文献一覧

もどって第七章

または目次のページ